—あなたのお仕事について具体的に教えてください。
在宅での医療介護に特化した事業展開をしています。具体的には、在宅で介護を必要とする方の生活のお世話をする訪問介護事業所と、同じく在宅で医療を必要とする方への訪問看護ステーションの両軸で運営しております。
そのなかで、利用者様の生活の質の向上のためには、保険適用内でのサービス提供に限界を感じ、ヘルパーや看護師の自費サービスも実施しております。
例えば、身近なところでは通院の付き添いや一時外泊時のお手伝い、転院搬送といったお困りごとの解決のみならず、お孫さんの結婚式参列や旅行などの外出支援といった、夢や希望を叶えるお手伝いも行っております。
また、訪問診療を行う医師を、バックオフィス(電子カルテの事務代行)というかたちでサポートする業務にも取り組んでいます。医師をサポートすることは結果のひとつですが、一番の目的は患者様のより良い生活のサポートにつながることです。加えて、パソコンさえあればできる仕事のため、子育て中の潜在看護師の発掘にも役に立っています。
—この仕事を始めたきっかけを教えてください。
看護師である私が、新卒で勤務したところは、ICU(※)。救命され集中治療を受けて元気になる方もいましたが、私は救命できずに亡くなっていった方々を忘れられませんでした。人生で最も尊厳を保たれなければならない最期の時に立ち会いながらも、私は人の心を持ち続けることができませんでした。患者様を人としてではなく、物のように扱ってしまう…なぜなら、悲しみや苦しみに寄り添っていたら、その度に自分が潰れてしまうからです。その一方で、人の心をなくして命を扱う自分が許せなくて苦しくて、そうなるともう医療の現場にはいられなくなってしまいました。
その後、デイサービスの立ち上げに携わることに。看護師と患者の関係ではなく、利用者様とは、人と人の関係を築ける嬉しさがありました。そんななか、囲碁を教えてくれる大好きな利用者様がいました。歩くのもふらふらで支えが必要だけど、一人暮らし。「一体、どうやって生活しているの?」という疑問から、訪問看護師の道へ。「これは天職だ!」と思いましたが、今度は保険制度の限界に加えて、組織のルールに縛られてしまうことで、サービスが行き届かないことに問題点を感じるようになりました。
「あんなことができたら」「こんなことができたら」…それを実現するには自分で仕組みを作るしかないと感じ、結果として経営者の道に進むことになりました。
これからも自分の家族にも受けてほしいと思える、そんな最高のサービスをつくっていきたいですね。
※集中治療室。生命の危機にある重症患者を、24時間体制で観察し先進医療技術を用いて、集中的に治療を施す環境設備。
—あなたの強みは何ですか?
決めたことは必ずやり遂げます。ですが、私は決して天才でもセンスがあるわけでもありません。ただ、必要な勉強はたくさんやってきました。そう努力できることが、私の強みだと思います。
—あなたの使命とは何ですか?
命、生と死に向き合ってきて思うことは、人生一度きり。後悔のない人生を歩んでほしい…その人が自分で自分の人生を決めて生きていく、そのお手伝いをさせていただくことが使命です。これは、ICU勤務時代の葛藤が大きく影響しています。
医療知識のない家族が、愛する人に生きていてほしいと願うのは当然のことです。救命・集中治療・延命を望まれ、その一方で「これでよかったのだろうか」と揺らぎ、葛藤する姿を多く見てきました。意識なく人工呼吸器に繋がれ、「これで生きてると言えるのだろうか」「本人はこんなことを望んでいたのだろうか」「尊厳は保たれているのだろうか」、と。
最期のときを管理されるべきではない、家族に決めさせることでもない…それは、自分で選ぶものではないでしょうか? そして最期の時、人生の集大成をどう披露したいかを考えたら、心身の健康のために自分がどんな人生を送ったらいいかを考え、行動できると思うんです。
—最後にあなたのこれからの夢を聞かせてください。
これからさらに、医療機関や介護施設が不足する時代に突入します。家族の力や地域の力が不可欠だと考えます。ご近所付き合い、町内会という機能はどこへ消えてしまったのか。専門職であることなど関係なく、人と人のつながりや助け合い、補い合いの仕組みをつくっていくことが夢です。
そして、人は命を終えたらどうなると思いますか? 人々の記憶の中で、情報となって生き続けるのだと思います。私は、情報となって生き続けたい。そんな生き方をしていきたいですね。
